生産・物流施設 倉庫 特殊倉庫設計―K冷凍冷蔵庫―

関東圏内の某学校給食センターの冷蔵冷凍庫の設計という特殊な依頼をいただきました。

実は弊社が設計依頼を受ける前に、幾度となく計画があがっては都市計画検討の末断念していた経緯があります。

今回はそのあたり(一般的には設計事務所はあまりやりたがらない)を纏めて書きます。

 

話が最初にあったのは敷地測量などでお世話になっている、土地家屋調査士さんからでした。

ある学校給食センターの広大な敷地において相続などの関係で境界確定の作業をしている中で、

センターのオーナーから以下のように言われたそうです。

「手狭になった食品管理用の冷凍冷凍庫を大きく作り変えたい旨、ある設計事務所に相談したところ、

敷地が広大(3000㎡以上)で、そこに新築を計画するには前面道路の幅員が足りない為不可能。

また、仮に土地を分筆して小規模で開発を逃れることはコンプライアンス違反なので困難、と言われた。

何か良い案は無いものか、だれか相談できる人はいないか」と。

確かに普通に考えればそれはそうなんですが、設計事務所の行う業務はサービス業です。

クライアントからの注文には出来得る限り応えるのが職能です。

敷地情報を教えていただければ検討して報告します、と即答し検討に入りました。

基本的な検討は基本無料です。

敷地内には給食製造に関係する施設が点在しますが、これらはどれも一旦つぶして作り替えるということが出来ません。

したがって冷蔵冷凍庫もどこか空いている場所に造ってから古い方を壊すという手順が必要になります。

 

そこで、まず敷地内の既存の建物がどのように建っているかの調査から始めます。

そもそも、敷地内に集団規定に違反した建築は建てられませんので、建ぺい、容積に余裕があるかのチェック。

過去の建築確認申請資料や測量図を基に今の建物群が基準法違反をしていないことをざっくりと確かめ、建てられるボリュームを確かめます。

過去の申請状況を見るとどうやら大きな敷地はAとBの二つの隣接する敷地を合わせて使っているようで、それぞれの敷地で建物群の建築確認をとっています。

開発の方向性についていくつか候補を挙げます。

方法①

敷地A(約2010㎡)にて既存敷地内の空いているところに冷凍冷蔵庫を造築する。(約288㎡)

ただし、開発許可を得る場合、【さいたま市都市計画法に基づく開発許可の基準に関する条例】によると

敷地面積が1000㎡を超えているので当該敷地は県道に接続する6M以上(敷地面積が1000㎡以下の場合は、4M)の道路に接しなければならない。

敷地全体区画だと前面道路幅員が6M以上必要となるため、拡張するには接道するすべての土地所有者及び管理するさいたま市との協議が必要になるため、

開発行為は非常に困難。(現在の前面道路幅員は4Mなので敷地が大きすぎる)

 

方法②

敷地B(約1790㎡)内に新敷地Cを設定(分筆)して新築する。

ただし、残った敷地内の既存建物群が「既存不適格」にならないように注意する。

敷地Cは500㎡未満とし、建ぺい率60%から300㎡までの冷凍冷蔵庫とする。

 

方法③

前面道路を6Mに拡張する為の協議を始める。

 

方法②は前段の設計事務所が言っていたコンプライアンスなんとかですが、

法規を遵守し、敷地外の誰にも迷惑を掛けない行為を自分の敷地内で行うことの何がいけないのでしょうか。

確かに、敷地Cを仮に他人に売ってしまい、残った敷地Bの建物が違法建築になる、という所謂「既存不適格」問題が発生しないよう、

細心の注意を払い、建物の配置などの検討をします。

行政から「12条5項報告」が求められる場合は当然それに応じなければなりません。

過去同じように大きな敷地に分筆して建てた例がコチラです。

本来はB敷地に「増築」するのが一般的でしょうが、必要不可欠な施設を同一敷地内に建てることで、

道路の拡張が必要になり、各行政(今回前面道路が区境なのでなおさら)、道路に接する全住民と協議(方法③)をしないとならないとなったら、

民間企業では到底対処できるわけが無いのです。

過去に遡ってずっと地域の為に貢献してきた工場敷地内の施設はどれも欠かすことのできない施設であり

敷地を切り売りするような事態はまずあり得ないとしても、それでも仮にその敷地が独立したとしても法規を守っている状態であれば、

だれが文句を言うのでしょう。

要は、前段の事務所はめんどくさいから、業務の割に合わないから、断る言い訳を言っているのに過ぎません。

 

というわけで、設計を受託し今は方法②の方向で進んでいるのであります。

喜ばれることであれば、出来ることは何でもやるのがモットーなのです。

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