今回の木造住宅改修工事では、いくつかの技術的な検討テーマがあります。
ひとつは前回記事で書いた、「ツーバイフォー構造の改修」について。
今回取り上げるのが、「屋根の改造」です。
木造住宅の屋根は、切り妻屋根、寄棟(よせむね)屋根、
そしてこの二つを合わせた入母屋(いりもや)屋根、となることが一般的です。
鉄筋コンクリート造の学校の屋上みたいな平たい屋根のことを陸屋根(ろくやね)と呼びますが、
木造ではめったに陸屋根にはしません。防水の納まりが悪いのと屋上を使うと言う概念が無いからです。
屋根に上る必要が無いならば、降った雨や雪は勾配に沿って下に落ち、漏水の原因となることを防ぐのが合理的だからです。
既存住宅のロケーションは海側を望むと高い建物が無い為、とても開放的な景色が広がっています。夏の花火大会時はきっと良い眺めでしょう。
そこで今回チャレンジは、せっかくだし木造だって屋上に上がりたいじゃん、というところからスタートしました。
既存屋根はいわゆるコロニアルという窯業系の薄いプレートを重ねた工法です。安価であることがメリットなのですが、
耐候性が瓦などに比べて良くなく、だいたい15年から20年で補修か葺き替えが必要と言われています。
屋根に上ってみると30年以上メンテナンスしていなかった屋根材はヒビや苔で無残な状態でした。
そこで、屋根材剥がしてメンテするのではなく、もういっそこの上から防水して手摺も付けてしまおう、と考えました。
それが、図のように軒先を削って垂直に壁を立ち上げ、FRP防水シート(ボートの船体に使う材料で、ファイバーを接着剤で固めたようなもの)
を蒸着させる、という答えとなり、以下の手順で行っていきました。
①軒先をカット
②ホールダウン金物を垂木受け梁周囲に設置、木軸立ち上げ
③木軸にケイカル板張り付け、壁及び屋根通気用ガラリ穴のこしらえ
④棟押さえ金物及び棟換気金物の除去(錆びて使えない為)
⑤下地合板貼り及びシーラー掛け(塗物が付着し易くする為の下地塗り)
⑥FRP本塗り、通気用ベンドキャップ取付、笠木取付(外壁施工時に)
ただしこれ、豪雨や積雪の多い地域では推奨できません。
樋は3ヵ所、オーバーフローも数か所入れてありますが、メンテナンスは必要でしょう。
(そのためのローリングタワーの購入も考えています)
さて、気になるお値段ですが現在進行形なので見積もり金額を参考にあげます。
屋根FRP防水 102.8㎡x12000円/㎡=1233600円
FRP用ドレン 3ヵ所x21000円/㎡=63000円
軒先解体工事 解体工事に含む およそ50000円
立上り木工事 木工事に含む およそ60000円
笠木金属工事 金属工事に含む およそ30000円
その他、ベンドキャップ棟付属金物、諸経費60000円
計 1496600円
まあ150万円(税抜き)ですね。これを高いとみるかどうか。
単体工事でやった場合はこれに仮設費などがかかるので、軽く300万円くらい行ってしまいそうです。
コロニアルの葺き替え単体工事だけでも200万円程かかると思うので、
やるなら共通仮設がある今やった方が断然お得です、といった印象です。
工務店曰く、「こんなことやったことない」だそうですが、ふつうはやらないでしょう。
1000年に一度の大豪雨が降らないことを祈っております。
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