住宅 住宅設計―町屋7丁目PJ―

2007年1月から始まった設計は7月に終わり9月着工しました。

設計時で工夫した点は、「RC5階壁構造」の採用、そして前回ブログで書いた、

一般的なアパートの間取りと違う点である、「インナーバルコニー」の採用です。

まず、収益案件で計画上第一に優先されるのが住戸数をなるべく多く確保することです。

敷地に住戸をパズルのようになるべく多く嵌め込んでいく作業を業界では「箱入れ」と呼んでいますが、

この箱入れ作業の流れをざっくりと以下に解説します。

箱入れの際に最も影響あるのがその敷地のいわゆる集団規定である

用途地域、防火地域の種類、指定建ぺい率、指定容積率、各種斜線制限、日影制限でしょう。

「集団規定」とは建物が周辺に与える影響を鑑みて決められた法律に関する規定です。

対して、「単体規定」はその建物の階段廊下の幅や部屋の採光などに対応した窓の大きさなど、

中に住む住民の安全性など建物の性能を鑑みて決められた法律に関する規定です。

今回敷地の概要は準工業地域、準防火地域、80%、300%、道路斜線、隣地斜線、日影制限、高度規定ありといった所。

民法の規定による隣地から50㎝の隙間をつくって建物を目いっぱい配置した場合、

だいたい建ぺい率は70~80%程度になります。今回は71%となりました。

次に高さで、大体何階建てくらいになるか。一番きつい道路斜線から5~6階かなとあたりを付けます。

敷地面積が184㎡で建ぺい率71%となると、184x0.71=1フロア約130㎡。

それが6階建てとなると単純に130x6=780㎡。

そのうち容積にカウントしなくてよい廊下などをの比率は約2~3割なので7掛けにすると、546㎡

敷地面積が184㎡で容積率300%までとなると、184x3=最大で約552㎡。>546㎡です。

いい線行ってますね、こんな感じで進めていきます。

日影制限を日影図を作成して当たったところ、6階はおろか5階丸々は無理でしたので、

なるべく面積カウントしない廊下やバルコニー面積を減らし、住戸の面積を増やすことを考えます。

ここで、ようやく今回のプランニングの特徴である

①階段とエレベーターは角に寄せる、

②廊下は無駄なので面積最小限のホールから各住戸に入る、

③バルコニーは作らないつまり「インナーバルコニー」の採用

という方針が見えてきました。あとは経験値によります。

1Kや1Rなど単身者向けマンションなら、県や区や市の条例によりますが

だいたい25㎡が下限面積として指定されています。25㎡のテトリスをぐりぐりしていきます。

25㎡がどのくらいの大きさかというと、6畳が1.62x6=9.72㎡、

バストイレミニキッチンはどんなに小さくしても11㎡とすれば残りは4㎡弱です。

ここに無いのは廊下と玄関と収納。70㎝の玄関と廊下が4mあっても3㎡は食われます。

あとの1㎡に柱があったら?収納ほとんど無くなってしまいますね。

バルコニーが無いから必要な室内型給湯器も置けません。

そこで柱梁構造でない「RC5階壁構造」の採用、これが奥の手でした。

建築基準法では5階建てまでRCの壁構造が許されているのです。

結果、日影ラインぎりぎりに納めて容積率272%(<300%)まで上げることが出来ました。

バルコニーが無いのは防犯性も良いし、女性に向けといった逆に差別化を計れる、

これがオーナーが納得したプランでした。

個人住宅と違う設計アプローチ、賃貸マンションの計画もやりがいの有るものです。

竣工写真はこちら

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